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ファシリテーションがあることで、一味違うカンファレンスをつくる(後編)

FAJが後援した外部団体のカンファレンス(C3カンファレンス 2016年6月10~11日開催)にファシリテーターとして関わった野口砂絵子さんの事例の後編です。

C3とは、Change by Creative Collaboration (創造的な協働による変革)の略。つまりこのイベントは、変革を目指す人々がコラボレーションによって化学変化、自己組織化をもたらす場を創ることも目指していました。さて、ファシリテーションはどのように機能し、何を促進したのでしょうか。

ファシリテーションの普及はこれから

Q.  今回の経験で、修羅さんはどのような感想を持たれましたか?

修羅 実は、ファシリテーションの普及は全然足りないということを感じました。C3カンファレンスに足を運ぶような参加者の間でも、すなわちデザイン思考や、イノベーションに興味があり、高額な参加費を支払って金曜日、土曜日の2日間のカンファレンスに参加するような参加者の間でさえ、ファシリテーションという言葉も知られていないことがわかりました。

Q. その感想を持たれたというのは、FAJ会員として結構衝撃なんですが、もう少し詳しく教えてもらって良いでしょうか?

修羅 カンファレンスのテーマが「イノベーション」でしたし、共催団体はビジネスアナリシス、アジャイル開発手法、デザイン思考といったジャンルでした。これらの手法には「ファシリテーション」がスキルの一つとして必須とされています。しかし、参加者や企画者との会話の中で「こういうのがあるんですね!ファシリテーションって言うんですか。初めて知りました!」と興味を示されたり、クロージングセッションの最後で、ファシリテーションを少しご紹介したところ、次々とご質問が出るといったことがありました。興味を持っていただけたことが嬉しい反面、それが現状なのだと思い知らされた次第です。こういったテーマで集まる人にすら知られていないなら、このテーマに興味のない人なら更に知られていない…と推測できますね。

受動的な場を主体的な場に変える

Q. 今回、修羅さんが目指されたことはどんなことだったでしょうか?

修羅 2つあって、1つ目は、ファシリテーションを用いてカンファレンスを受動的な場から主体的な場に変えることでした。これは、主催者の意図を支援するものでもあります。2つ目は、参加者にファシリテーションの存在を知って貰うということでした。

Q. 修羅さんが目指されたことはどれくらい達成されましたか?

修羅 受動的な場から主体的な場に変えることについては、カンファレンスの一部分を変え、参加者に一味違うと感じていただけたと思います。また、多くの参加者にファシリテーションという考えを知って頂けたということも、当日の感想や質問、事後アンケートの回答からも感じることができました。

Q. 達成された要因はなんだったでしょうか?

修羅 達成できた要因としては、以下が考えられます。
・主催者(の一部)としっかり意識をすり合わせたこと
・基調講演者が「グラフィック・レコーディング」を好意的に受け入れてくれたこと
・基調講演で実施した「グラフィック・レコーディング」によるビジュアルなインパクト
・「オープンジャム」コーナーの温かな雰囲気づくり
・強力なFAJメンバーとのチームでの企画作り

Q. では逆に、目指された中で達成できなかった部分についてはどうでしょうか?

修羅 達成できなかったことは、個々の分科会の在り方を変えることと、分科会間の繋がりをつくることでした。また、開催の約1ヶ月前からの企画参加であり、ほぼ全ての内容が決まっていたこともあって、カンファレンス実行委員会の進め方にファシリテーションを取り入れることについては、目指すのを諦めました。私が参加できた実行委員会は、事前1回、事後1回のみでした。

時代がファシリテーション的なものを求めている

Q. 修羅さんが今回の経験で学んだことってありますか。

修羅 ファシリテーションとほぼ同じことをファシリテーション以外の専門分野の人が別の名前で始めていると感じました。名前のあるところではシステム思考、デザイン思考、TOCといった専門の方々が、組織の在り方を変えようと活動なさっています。そのアプローチはFAJで私たちが探求しているアプローチと大差ないように感じています。システム開発の世界で流行であるアジャイルもリーンも、ファシリテーション無しでは成功しない技法ですし、プロジェクトマネジメントでも、ファシリテーション的なアプローチの比重が徐々に大きくなってきています。時代が、ファシリテーション的なものを求めているのをひしひしと感じます。

Q. 他にもありますか?

修羅 もっとファシリテーションを普及する余地は残っているということも今回学びました。一番期待しているのは教育現場です。ただ、それは私の専門では無いので応援したい、支援したいというのに留めておきます。

Q. ファシリテーションの普及としては、今後どのようなアプローチが必要だと思いますか?

修羅 FAJとしては、今回の共催のように組織変革に取り組んでいる団体に、ファシリテーションでお手伝いするというか、ファシリテーションを売り込んでいくような活動も効果的かと思います。私自身としては、地道に自分の職場の周囲をファシリテーション色に染めていく活動を続けます。先ほども言った通り、現在ファシリテーションには追い風が吹いていますので、今が声をあげていくチャンス!と思っています。原理主義や宗教戦争に陥ること無く、無節操に懐の深い日本文化らしいファシリテーションの定着をしていきたいですね。

Q. 最後に、これから同様の経験をする後輩ファシリテーターがいるとしたらどんなことをアドバイスしますか?

修羅 …私自身、まだ「先輩」と言えるか疑問ですが、敢えてアドバイスするとしたら、一人だけで頑張るのではなく、信頼できるチームを作って事にあたる。ただし、自分のコミットメントは一人だけの場合と変えずに…でしょうか。自分一人だとしても最後までやりきる覚悟で力を尽くすけれど、自分では手が届かない、違う力を発揮していただくために、仲間を頼った方が良いということです。チームで取り組むことで、最終的な成果が高まったり広がったりする体験を、毎回驚きながら楽しんでいます。

Q. 「驚きながら楽しむ
」って素敵ですね。貴重な事例紹介をありがとうございました。

野口 砂絵子 (修羅)

東京都在住

冷静沈着、それでいて心優しいエンジニア。そして職場のみんなが元気でモチベーション高く働けることに心を砕く、熱いハートのマネージャーでもある。

そのファシリテーターぶりも、クールでかつ温かい。場にいる人々へのイマココに目配り、気配りが行き届いている。

修羅

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