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目的や方法を理解、納得することで、情熱やモチベーションが喚起されることを実感

兵庫県西宮市からは、企業や団体、学生などに対する様々な場面でファシリテーターとして活動されている水江泰資さんです。
今回は、ある企業から依頼された人事制度改革プロジェクトでのファシリテーター実践について聞かせていただきました。


Q.まず、あなたのことを教えてください。
 私は、水江 泰資といいます。長らくマネジメント団体に勤務し、リーダーシップやマネジメントを研究してきました。また、企業や団体の人事制度の構築や教育研修で活動の支援を行っています。
 最近では、採用活動でのアドバイスや、逆に学生の就活支援など仕事の幅も広がってきました。様々な集団場面でファシリテーターとして活動しています。

 

 

Q.今回、ファシリテーションの実践事例を紹介いただけるとの事ですが、どのような実践をされているのでしょうか?
 ご紹介するのは、人事制度改革プロジェクトでのファシリテーター実践です。
 仕事の依頼は、ある業務用素材メーカーA社の人事部からでした。
 従業員は約600名。
 2013年の冬に相談があり、仕事としては2014年2月~2015年9月まで続きました。

 

 

Q.実践内容をもう少し詳しく教えてください。
 A社の業績は順調でした。人事制度としては20年ほど前から目標管理制度(MBO&SC)を導入していましたが、結果的にはきちんと浸透していないようでした。私が社員の方々へインタビューしただけでも、目標管理制度の存在さえ知らない人もいる状態でした。
 加えて、日本企業にありがちな温情主義も手伝って、管理職が3分の一を占めるようになってしまいました。すなわち部下無し部長なども多数存在し、このままでは人件費を圧迫する恐れが出てきました。同時に、これ以上管理職が増えることを抑制するために、後進の出世が遅れるような仕組みも考えられる有様で、従業員のモチベーションが大きく下がる恐れも出てきました。
 そこで、正しい目標管理制度の理解および浸透と、新しい賃金制度を導入し、「頑張った人が報われる人事制度の実現」を目的に、新規でプロジェクトチームを発足させ、その運営を支援するファシリテーターとして私が呼ばれました。

 

Q.水江さんに声がかかったということですね。
 はい、私はプロジェクトメンバーとして呼ばれたほうです。
 メンバーの人選は当時の人事部長(現在は役員)がかなりの使命感と危機感を持って行い、このプロジェクト進行に臨んでおられました。
 人事部長さんと私は以前から人事制度や労働基準法を学び合う仲間として知り合いでした。また幾度かの飲み会なども経てお互いの人柄や価値観を親しく知っていたという経緯がありました。そのあたりの安心感や期待から私が呼ばれたと聞いています。

 

 

Q.プロジェクトではどのようなことをされていましたか?
 月1~2回、3時間程度のミーティングを重ね、新しい人事制度や賃金制度の骨格づくりミーティングでは、理解の促進を目的に、様々なフレームワークを多用しました。

 フレームワークとしては、システム思考をベースに時系列変化パターングラフ、ループ図、SWOT分析を活用しました。

 


 

水江さん

水江泰資さん

兵庫県西宮市

【プロフィール】

企業や団体の人事制度の構築や教育研修で活動の支援や採用活動でのアドバイス、学生の就活支援など多岐にわたり活動中。
大阪経済大学非常勤講師。カメラ好き、怪獣映画好きなどマニアックな一面も(笑)

Q.フレームワークについて少し解説いただいてよいでしょうか?
 時系列変化パターングラフは、二つの曲線を用い、未来への展開を「見える化」する方法です。
すなわち、

 Aパターン:このままの処遇制度、賃金制度のままでは緩やかに且つある時点を境(臨界点)に急激に組織が衰退していく。
 Bパターン:改革を実行した場合、当初は多少の混乱があるがその後は緩やかに上昇傾向していく。

 Aを選択するかBを選択するか?
 それは従業員のモチベーションとも大いに連動していると考えられます。
 この図を用いたことでプロジェクトメンバーへの目的意識が大いに芽生えたようでした。

 ループ図は、因果関係をわかりやすく見える化したものです。
 しかし、これは、相手に伝えるインパクトも大きいため、分かりやすさを求めすぎると、目立たないけれど重要な要素の採用などがおろそかになりがちになるので、多用は慎重にと感じました。

 SWOT分析は、自社の方向性を考えるために4つの象限を切り口として考える方法です。すなわち、内部要因として自社にとっての強み・弱み、外部要因としての機会・危機を挙げ、次の一手(プロアクション)を考える材料としました。

 

 

Q.ありがとうございます。その後、プロジェクトはどのような展開をされたのでしょうか?
 今年の春から秋にかけて人事部主催による人事制度説明会を実施し、私も説明講師役として出席させていただきました。
 まず、なぜ人事制度を変えないといけないのか、という目的を、続いて制度変更の流れについて詳細を説明しました。
 質疑応答の時間もたっぷりとりました。
 その結果、社員の方々のモチベーションが高まってくるのを感じました。
 現在では管理職全員への周知は終了し、残るは従業員の方々への周知をどのようにしていくか検討しているところです。

 

 

Q.プロジェクトに参加された結果、水江さんが感じられたことなど教えてください。
 人は、目的(mission)や方法(vision)を理解、納得することで、情熱(passion)やモチベーションが喚起されるものだと改めて実感しました。その順番も大事だと思います。自分自身のファシリテーターとしてのキャリアアップという点でも良い経験をさせていただきました

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