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防災×ファシリテーション


つながるコラム第二弾は、FAJの会報「ニューズレター」の記事から、2014年12月に開催された「1000人クロスロード」の様子をご紹介します。

災害現場という「”正解”のない現場」での知見をどう引き出し、伝えていくか。防災の領域でファシリテーションがどのように活かされているのでしょうか。

※本記事は、会員誌”FAJ NewsLetter OUR ZOO” 50号(2015.4.30発行)より、関係書の了承を得て転載しております。

 

全国をつないだ

「1000人のクロスロード」

ー世界に通用するファシリテーションツールー

2014年12月23日、神戸をはじめとした全国10都市をネットワークでつなぎ、「1000人のクロスロード」が、千人クロスロード実行委員会主催で開催された。FAJも後援に名を連ね、全国のFAJメンバーが、運営側、出席者側として各地で参加した。「クロスロード」は、震災の体験をゲームで伝える研修ツール。本イベントの様子と共に、幅広く活用される魅力を伝えたい。

防災学習ゲームとして 注目を集める

「神戸クロスロード研究会」は、震災 の経験を活かし防災に役立てるため 2005 年から活動。今年が阪神・淡路大 震災から 20 年目を迎えることから、全 国で培ってきたネットワークをつない で、千人クロスロード実行委員会を立 ち上げました。

 全国 10 開催都市のうち、 札幌、仙台、福岡では FAJ のメンバーが運営の中心となりました。今回はイ ンターネットを使って神戸会場の様子 を配信。特にメイン会場の神戸と仙台、 高知は映像を通して相互に出題しあい 意見交換するなど、全国がつながって いるという一体感に包まれました。

 開催以降、報道をご覧になった全国 の方から「体験してみたい」という問 い合わせが来ています。こうした要望 に、それぞれの地域でお応えできるクロスロードの「地産地消」が理想です が、今回のイベントをきっかけに全国 のつながりがひとつのネットワークにな り、それに 1 歩近づいたと感じています。

 また、2013 年には、 IAF アジア・ 東京大会で海外のファシリテーターに クロスロードを紹介。ゲームの雰囲気 や捉え方にもお国柄が出て、多様性を 認め合う上でも有効なツールだと確信 しています。世界制覇も夢じゃない !?

正解を求めるのではなく、 価値観を共有

 阪神・淡路大震災に直面した神戸 市職員の、現場で対応に悩み苦しんだ 経験をもとに考案されたクロスロード。 2004 年、文部科学省の研究事業に神 戸市が協力し、京都大学防災研究所を 中心とするグループによって生み出されました。

 クロスロードでは、防災などにおける悩ましい 事例を簡単な設問にして います。「人数分用意でき ない緊急食料をそれでも 配るか」、「あらかじめ自 宅で準備していた備蓄食 料。避難所であなたはあ けるか」など、被災地で 実際に迫られた難しい状況判断が、カー ドとして出題されます。参加者は、そ の事例を当事者としてとらえ、YES / NO で自分の考えを示し、その背景と なった経験や考え方、知恵の交換・共 有を行います。

 一般的に研修では、参加者は「正解」 を求めがちです。しかし災害対応において、必ずしも「正解」があるとは限 らないことや、過去の事例が常に正解 でないこともあります。単一の正解を 求めるのではなく、「それぞれの災害対 応の場面で、誰もが誠実に考え対応す ること、そのためには災害が起こる前 から考えておくことが重要であること」 に気づく。そして災害対応を自らの問 題として考え、さまざまな意見や価値 観を参加者同士が共有することを目的 として、クロスロードは制作されました。

広がるクロスロード 活用の輪

 もともと防災研修教材として開発 されたクロスロードですが、悩ましい ジレンマの生じる場面での経験を伝え、 困難な決断を迫られることが予測される場面での判断について意見を交わす こと、いわゆる、リスクコミュニケー ションを促進するツールとして、ジャン ルを超えて応用範囲が広がっています。 既に「食の安全」編や「感染症」編な どが開発されているほか、教育、子育 てなどの現場や企業などでも活用され 始めています。また、相互理解と多様 な価値観の共有を目的として、設問の 作成自体を行なうプログラムも開発さ れています。

 FAJ では大阪で開催されたファシリ テーションフォーラム 2007 の分科会で 初めて紹介され、全国の定例会に広が りました。東日本大震災の前年(2010 年)には FAJ のメンバーが中心になり、 宮城県庁主催研修会を開催。大震災の 折にはゲームの経験を思い出すことで役に立ったのだそうです。また北海道 支部では、支部の活動として「クロス ロードチーム」が立ち上がるなど、独 自の活動も広がっています。やはり、一 度は体験してみないと分からないもの。 今回都合がつかなかった皆さんも、次 の機会にぜひ、体験してみてください。

 

 

西 修(にし おさむ)

関西支部。神戸市職員。神戸クロスロード研究会理事。神戸まちづくりワークショップ研究会代表世話人。ワークショップのノウハウを活用してプログラム開発を行うなど、自らの震災体験も交えてクロスロードの普及活動をおこなっている。


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