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教育×ファシリテーション


「つながる」コラム第二弾は「教育×ファシリテーション」をテーマに、日本ファシリテーション協会(以下FAJ)教育ファシリテーション推進室室長の上井靖(うわいやすし)さんです。

上井さんは、現役の名古屋市公立中学校長でありながら、ファシリテーションのエッセンスを交えた対話型授業を定例会で行うなど、精力的に活動しています。

折しも昨年末に文科省は、これからの小中学校にも「アクティブ・ラーニング」を展開していくことを表明しました。ますます上井さんが目指す姿に近づいてきているのではないでしょうか。 そんな上井さんに「教育×ファシリテーション」について、「つなぎ隊」※1が伺ってみました。

※1つなぎ隊 このオープンFAJのイベントに乗じていつのまにか勝手に出来上がったオープンFAJスタッフ有志。日夜現場で奮闘しているファシリテーター達を応援し、自身も切磋琢磨しながら、ファシリテーションの良さを伝えていく仲間です。ゆるく隊員を募集中。

つなぎ隊:  上井さんよろしくお願いします。

上井:  こちらこそよろしくお願いいたします。

つなぎ隊:  上井さんは現役の中学校の校長先生ですよね。私のイメージする校長先生は話すことも緊張してしまうくらい威厳があって手の届かない存在と勝手に思ってました(笑)。

上井:  威厳があるように見えないですよね、よく言われます(笑)。

つなぎ隊:  でも、こんな校長先生がいる学校で生徒だったらよかったなと思いました・・。(遠い目)  あ・・、すみません、本題にはいりますね。  早速ですが、上井さんのこれまでのことを教えてください。

上井:  私はこの10年近く、ファシリテーションをベースに、アクティブ・ラーニング型授業や対話の場づくりを推進・普及する活動を続けてきました。  また、公立中学校の校長として、アクティブ・ラーニング型のマネジメントを進めてきました。

※1 「『アクティブ・ラーニング』とは、一方向な講義中心の授業ではなく、学習者同士での双方向な活動により、学習者が自発的・恊働的に課題を見つけ解決する力をつけるための能動的な学び」を意味します。

 私は、もともとは理科教師なので、若い頃から、理科室での授業が多く、基本的にグループで話し合ったりして、実験・観察に取り組んでいることがほとんどでした。  そんなことから、私の授業は常に教師が一方的に話すだけの講義型というより、教師がファシリテーターのように振る舞い、生徒同志の学びを促進していたように思います。

上井:

 また、FAJに入ってからは、「白熱授業」と題し、主に定例会で対話型のワークショップを行っていました。  すでにご存知のタイトルもあるかと思いますが、「理科 科学的合意形成に挑戦! 」や「道徳 モラルジレンマ」、「算数 3÷0は?」、「道徳 あなたの私の当たり前が覆る瞬間!」、「体育 ヘリウムリングでチームビルディング」ですね。  私がFAJの定例会で発信してきたこの「白熱授業」は、この『学び合い』やファシリテーションのマインドを大切にし、スキルを活用していました。

つなぎ隊:  上井さんが『学び合い』を大切にするきっかけは何かあったのでしょうか?

上井:  実は私がこれまで見てきた中で感じていることがきっかけだったかもしれません。  それは教師は一生懸命やっているにもかかわらず、子どもたちが吹きこぼれたり落ちこぼれたりすることが度々生じていることでした。

つなぎ隊:  具体的にはどんなことでしょうか?

上井:  例えば私自身、中学生から大学生までで受けた授業で、吹きこぼれと落ちこぼれを両方体験しています。  吹きこぼれは、中3の時の英語の授業です。塾で予習していたので、教科書をただすすめていくだけの講義中心の授業に、まじめに取り組んでいませんでした。  教科書の白黒のカットに色鉛筆でずっと色づけしていた記憶があります。

 落ちこぼれは、高校の数学の授業です。  ひとしきり先生の説明の後、問題を解くのですが、講義を聴いている途中で、「?」と思ってもどんどん先に講義は続いてしまい、私はそこから思考停止に成り、ついて行くことができませんでした。  そして、いつのまにか落ちこぼれてしまったことを思い出します。

つなぎ隊:  それは誰でも経験ありそうな話ですね。私もそうでした。中学の時、窓際の席にいると、もう午後は眠くて眠くて。。先生によく怒られたものです。学ぶというより、このつまらない授業が早く終わってくれないかなと良く思ったものでした  ・・っと、先生の前でごめんなさい、いい生徒ではないですよね。

上井:  いえいえ、私自身もそんな感じの生徒でしたよ。

 そういえば、若い教師の授業力を高めるといった立場で、授業を参観することがあります。

その様子を見ていると、教師がよかれと一生懸命授業をすすめていても、子ども一人一人の認知や理解の仕方やスピードが違うことが、横で観察しているとよく分かります。

そして授業後、私が見えていた事実をその教師とのふり返りの場で伝えると、そのときに、「はっ」と気づかれる方がいらっしゃいます。

 きっと、教師というものは、良くも悪くも「私が知っていることは、子どもたちにきちんと伝え理解させなければならない」といった性(サガ)がはたらくのかもしれません。

 自分が子どものとき、自分や周りの子の授業態度やその背景はどうだったかを思い出してみるといいですね。

つなぎ隊:  そして、その後、上井さんは教師になって、『学び合い』へと進んでいくわけですね。

上井:  理科教師として、グループで話合う授業が多かったのは前にお話ししましたが、それとは別に、ある中学3年生のクラス担任だった時に、定期試験前の学級の時間、学び合いを多く取り入れたので、成績がいい・悪い関係なく、男女関係なく仲が良いクラスに成長していったと思います。  中学3年生の終わりには、入試に向けて、休み時間中もいろいろな仲間同士で、問題を出し合い、学び合いが展開されていました。

 私は、ウフフと 見守っていた記憶がよみがえります。

つなぎ隊:  なるほど、上井さんにとっては『学び合い』は生徒の学力だけではなく生徒同士の関係性も活性化するものなのですね。

それなら生徒の楽しそうな姿を見て教師も楽しくなる、授業も楽しくなる。

そんないいサイクルが生まれているように思いました。

上井:  はい。その通りです。  『学び合い』は、基本的に教師は子どもに対してteachingをしません。問いを出し、心得を伝え、子どもたちに委ねます。  子どもたちを誰一人見捨てずに、子どもたち同士で問題を解決する学習法です。  この『学び合い』での子どもたちの様子は、とてもアクティブなんです。  その後に私はファシリテーションを知りました。  『学び合い』での教師の役割はfacilitatorと言えるでしょう。

 なので、私は常々「教師はteacherだけでなくfacilitatorにもなってほしい」と思っています。  なぜなら、facilitatorは『学び合い』を促進するべき役割だからです。

つなぎ隊:  さて、話は変わりますが、教育関連で言うと昨年末にこれからの学習指導要領について大きな変化があったと聞いています。

上井:  そうですね。学習指導要領は10年に一度改訂されます。次期学習指導要領は、平成32年より小学校から順次実施されていきます。

 そんな中、昨年11月20日、元下村文科大臣から中央教育審議会に「次期学習指導要領の目玉は『アクティブ・ラーニング!』 その実現のための課題の解決を、平成28年度末までに答申せよ!」との諮問が出ました。

 では、なぜ、このような流れが生まれてきたのでしょう?  その理由として、経済産業界から、日本の行く末を心配、危惧する声が出ているそうです。  では、これからの日本を創っていく人材は、どんな力が必要なのでしょう?  ・自発性  ・コミュニケーション能力  ・問題解決能力  これらの能力を、各教科の授業の中でも培っていこうということです。「教える⇒学ぶ」への転換とも言われています。

 その大きな変革として、アクティブ・ラーニングのもつ意義は大きいと思っています。  この方針では、より自主的・協働的な学びが重要と言われています。その学びの場を創り促進していくファシリテーターの存在が必要となり、教師にファシリテーターの役割が要求されます。  今、文科省や経産省からのメッセージが私の後からついてきた!と、とても喜び震えているのです。

つなぎ隊:  上井さんの願っていたことが現実に近づいてきましたね。とても素晴らしいことだと思います。  さて、最後になりましたが、上井さんは、今後はどのようにしたいですか?これを読んでいる皆さんへ向けてメッセージをお願いします。

上井:  この場を借りて、アクティブ・ラーニングに関心があり、授業を変革したいと考えておられる関係者の皆さん、是非私と『教育×ファシリテーション』を一緒に考え、作ってていきませんか?と言いたいです。  まず、その手始めに次期学習指導要領改訂の目玉となる、アクティブ・ラーニングをテーマとして、FAJの教育ファシリテーション推進室が中心となり、アクティブ・ラーニング・ファシリテーター養成講座を全国で展開する予定です。

つなぎ隊:  そうですか! それは関係者の方々には朗報ですね。  教師が『アクティブ・ラーニング』ファシリテーターになり、ファシリテーションのエッセンスを取り入れた『学び合い』の授業が、どんどん広がっていくことを願いながら、ますます今後の上井さんの活躍に期待しています。

 本日は本当にありがとうございました。

上井 靖 (うわい やすし)

2006年FAJ入会。2010-2014理事。現在、教育ファシリテーション推進室長、中部運営スタッフ。本職は名古屋市立八王子中学校校長。

本文中にあった「アクティブ・ラーニング・ファシリテーター養成講座」の詳細になります。

ご興味ある方は是非いかがでしょうか?

□ 「アクティブ・ラーニング・ファシリテーター養成講座 ? 効果的なアクティブな場づくりとは??   <入門編>」~効果的なアクティブな場づくりとは?~

■内容  次期学習指導要領改訂の目玉として、アクティブ・ラーニングが話題になっています。中央教育審議会は来年度末までには、評価の在り方も含めその方針を答申する予定です。この方針では、より自主的・協働的な学びが重要と言われています。その学びの場を創り促進していくファシリテーターの存在が必要となり、教師にファシリテーターの役割が要求されます。   このアクティブ・ラーニング・ファシリテーター養成講座では、「そもそもアクティブな状態とは?」「授業中の児童・生徒がアクティブになるためには、教師は何を変えるの?」などの問いに対して対話を中心に、アクティブな学びの場づくりやファシリテーターとしての在り方を探るワークショップを進めていきます。また、 「今、なぜ アクティブ・ラーニングなのか?」のレクチャーも交えます。  アクティブ・ラーニングに関心があり、授業を変革したいと考えておられる方、ふるってご参加ください。 ■主催: NPO法人 日本ファシリテーション協会 教育ファシリテーション推進室

■名古屋開催 申込はこちら ・日 時 2015年11月14日(土)9:30~12:30(9:15 受付開始) ・会 場 名古屋北生涯学習センター 視聴覚室 ・対象者 「授業づくり」「学級経営」などに取り組む教師を中心とした学校教育関係者です。       ※学校教育関係者以外の方のお申し込みはご遠慮いただいております。

■広島開催 ・日時 2015年12月26日(土) 会場等詳細は後ほど。

■東京開催 ・日時 2016年2月ごろ開催予定


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