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フェロー対談 森 時彦 氏 × 中野 民夫 氏 (第3回)

何をしたいのか? 

そこから始まるファシリテーション

FAJが誇る名ファシリテーターである森時彦さんと中野民夫さん。2011年のFAJ会報誌『ニューズレター』紙上に掲載された豪華対談を4回に渡り連載いたします。

あの対談から5年、今現在のお二人から、それぞれの現場での活動や感じられているをコメントいただきました。連載3回目は中野さんのコメントです。どうぞお楽しみください。

「教える」より「学び合う」場を創ろう!   中野民夫さん

「参加型授業」の試み

 最近はどんなファシリテーションをしているの?と問われれば、「大教室での参加型授業の試み」にもっぱら取り組んでいます。 大学ではまだまだ一方的な講義が多く、特に数百人の大教室では後ろの方では寝ていたりスマホを触っていたりが当たり前の光景。先生も学生もそんなものだと諦めています。でも、せっかく人が集まっているのに、これではあまりにもったいない!もっとできることあるよ、みんなが生き生きして一人も眠らない授業を目指そうよ!とファシリテーションを応用し、「教える」より「学び合う合う」場を創ろう!と大学教育のイノベーションにチャレンジしています。  森さんと対談させていただい頃は、博報堂という企業に勤めながら、主に個人の「ワークショップ企画プロデューサー」という肩書きで、分野を超えた多様な方々とワークショプをしたり、ファシリテーションの講座をしたりしていました。2012年に縁あって京都の同志社大学の教員になり、数百人のクラスも担当するようになり、がらっと世界が変わりました。一般社会でのワークショップは、参加する人に強い思いがあり、お金も時間も必死でやりくりしてやってくるので、始まりさえすればかなり盛り上がります。でも学生は「楽に単位が取れればいい」と思っている場合が多く、なかなか手強いのです。ワールドカフェ的な対話の場を作ろうと小グループに分けてお題を出して始めたところ、ある男子だけのグループは互いに目をそらしてずーっと黙っていたのです。これには驚きました。自ら「コミュ障」(コミュニケーション障害)だと自称する学生もたくさんいます。人数も多いし、みんなをのせるのは大変です。 日本では2000年前後から、アートや自己啓発、自然体験や異文化理解、NGO・NPOや市民活動、まちづくり、そしてビジネス、さらには災害復興支援へと、幅広くワークショップやファシリテーションは急速に広がってきました。この流れの中で、学校教育、それも大学は、もっとも遅れていると思います。長年に渡って確固たる「教育」のスタイルができあがっているからでしょう、いまだに先生が一方的に話し続けていることが多いのです。さすがに受動的な学びだけでは学生の「主体性」や「学習意欲」が育まれないと、最近急に「アクティブラーニング(能動的な学び)」が必要だと叫ばれ始めたりしています。そんなこと、おれたちずっと前からやってますよ、という感じですが、慣れない先生方には大変な負担になっていて、今、教育の世界は揺れています。

京都での至福「究極のワークショップ」の日々

 あと、京都に住んだ3年半、「ヨーガ」と「音楽」と「料理」に目覚めました。会社を辞めて東京から京都に移り、鴨川の夜明けがあまりに美しくて、毎朝早起きして日の出に向かってヨーガや瞑想をするようになりました。ワークショップで、準備運動やリラクゼーションとして気功や瞑想など身心を扱うことは前からやっていましたが、ますます大事だと思うようになりました。  また音楽も、聴くだけではなくもっと気楽にアートしようよと、自らギターやクラリネットを習ったり、最近では自作の歌も生まれたりしています。ファシリテーター型シンガーなので、シンプルなメロディーをみんなで歌うのが好きです。最近のぼくのワークショップには必ずギターを持って行き、参加者はいつのまにか歌うことになっています(笑)。  京都ではおばんざい風の料理に開眼し、大学のすぐそばに一人暮らししていたこともあり、院生や友人たちと一緒に料理を作って食べたり飲んだりよくしました。「タミズキッチン」と呼ばれ、週に何度もオープンしていましたが、共に食し飲み語り合う場こそ究極のワークショップだなあ、と感じていました。

 京都での至福とも言える日々の成果は、『みんなの楽しい修行』(春秋社)という本に昨年まとめたので、読んでいただけたらうれしいです。

「志」のある人材を育てる

 この9月からまた縁あって、国立の東京工業大学という世界のトップクラスを目指す理工系の大学に移りました。専門性だけでなく「人間性・社会性」を兼ね備えた「志」のある人材を育もうという大改革を、リベラルアーツ研究教育院という新組織で推進していく一員に加わりました。生身のコミュニケーション力を高めて、人生を充実させるのはもちろん、広く社会に貢献できる若者が続出するよう尽力していこうと、様々な試みを始めているところです。

次回は、、、
第2回
対談で紹介された書籍
紹介された書籍

『みんなの楽しい修行』より納得できる人生と社会のために

中野 民夫 著(春秋社)

修行は本来楽しいものだ! 人生をもっと充実させるために、社会にもっと貢献するために。元博報堂勤務、現在は同志社大学教授、ワークショップやファシリテーションを指導する著者が、人生と社会をより良くする10のポイントを楽しく伝授。

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森 時彦

㈱ワイ・インターナショナル、代表取締役社長

㈱リバーサイド・パートナーズ、シニア・アドバイザー

チェンジ・マネジメント・コンサルティング代表取締役
BBT大学客員教授/日本工業大学大学院客員教授
/NPO法人日本ファシリテーション協会フェロー

大阪大学卒業後、マサチューセッツ工科大学(MIT)へ留学。
神戸製鋼所を経て入社したGE (ゼネラル・エレクトリック)では製品開発から事業企画・営業まで、様々な組織のリーダー、日本GE役員などの要職を歴任。
その後、テラダイン(日本法人)代表取締役を経て、株式会社チェンジ・マネジメント・コンサルティングの代表取締役として組織活性化に携わるかたわら、2007年からは中堅企業の成長促進による価値創造をビジネスモデルとする投資アドバイザー会社・株式会社リバーサイド・パートナーズの代表パートナーに就任。
著書に『ザ・ファシリテーター』『ザ・ファシリテーター2』『ファシリテーターの道具箱』『セルフ・ファシリテーション』『プロフェッショナルファシリテーター』 他

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中野 民夫

ワークショップ企画プロデューサー。東京工業大学教授(来春発足するリベラルアーツ研究教育院)1957年東京生まれ。東京大学文学部卒。株式会社博報堂に30年間勤務。大阪の営業から始め、1990年前後に休職・留学したカリフォルニアで、組織変革や環境や平和の分野で様々なワークショップに出会い、研究を始めた。復職後は、企業の社会貢献活動や愛知万博の地球市民村(NGO Global Village)など社会テーマ系の仕事に従事。一方個人で、人と人・自然・自分自身をつなぎ直すワークショップや、分野を超えて参加型の場づくりを学ぶファシリテーション講座を、Be-Nature Schoolなどで実践。2012年に早期退職して京都の同志社大学の教授に転身、大教室での参加型授業を展開。15年秋から教養教育による東工大の改革をめざすリベラルアーツの動きに参画。主著に、『ワークショップ』『ファシリテーション革命』『みんなの楽しい修行』など。公益社団法人日本環境教育フォーラム理事、FAJフェロー

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