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フェロー対談 森 時彦 氏 × 中野 民夫 氏 (第2回)

何をしたいのか? 

そこから始まるファシリテーション

FAJが誇る名ファシリテーターである森時彦さんと中野民夫さん。2011年のFA会報誌『ニューズレター』紙上に掲載された豪華対談の連載第2回。

お二人のファシリテーションとの出会い、そして日本でのファシリテーションに欠けているものについてのお話の後に続くのは、スキルとマインドについてのお話です。

ファシリテーションに必要なのはスキルかマインドか?

編集部:ファシリテーションにより必要なのはスキルでしょうか、それともマインドでしょうか。

 

中野:それは当然、どちらもないとダメなんじゃないかなぁ。スキルを上げるにはとにかく実践を積むしかないんじゃないでしょうか。もちろん実践を積む前に、予行演習なり、準備は、大切ですね。でも、最初に“思い”みたいなものがないと、どういうスキルを身につけた方がいいのか、ただ闇雲に追い求めることになってしまうのでは。私のことをマインド重視のファシリテーターと思っている方も多いようですが、ホワイトボードを置く位置や、角度などにも相当こだわっていて、そういうテクニックには誰も気付いてくれないのが少し寂しいんですよね(笑)。

 

 :スキルだから鍛えれば上がるものだけれども、その前に、先ほどの講演を依頼された会社と同様に、まず“目的”が重要ですよね。会員の皆さんそれぞれが持つ「何のためにファシリテーション協会に来たのか?」組織であれば「何を達成したいのか?」ということがはっきりしないとスキルだけ高める努力はむなしいと思います。私の場合は、リーダシップ・スキルとしてのファシリテーションが一番大きなテーマだったわけです。最初に問題意識があって、ワークショップという手段があって、ファシリテーションは言うなれば道具ですよね。単にファシリテーションが今、はやってるから、よさそうだからということでは、スキルも上がらないんじゃないでしょうか。スキルのないファシリテーションは役に立たないし、マインドのないファシリテーションでは人は動かせないと思います。

 

中野:私の場合、やっている目的は、人が集まって何かを解決しよう、あるいはお互いをうまく生かし合って、相互作用の中でいいものを生み出そうとする時に、ファシリテーションは役に立つと思ったからなんですよ。今、いろんな難しい問題があって、誰も簡単に解決できる答えを持ってなくて、それぞれの現場から声を持ち寄ってみんなで考えるときに、うまいやり方ってあるんじゃないの、というのが原点ですね。

 

 :中野さんの本『ワークショップ』(岩波新書)の中で端的に表現されている言葉があって、「現代社会では、何が問題なのかというテーマについては出尽くしている。今はこれからどう取り組んでいったらいいかという『方法』こそが求められている。人にとっての根源的な喜びが内存した魅力的な方法が求められている」―本当にその通りだと思います。経済問題であれ、少子高齢化問題であれ、答えっていうのはあるんですが実行の段階でうまくいかないんですよね。そういう時に、ファシリテーションって役に立つと思いす。

ファシリテーション力をつけるためには、本を読んでみるだけじゃなく、「体験してみる、自分でやってみる」「良質なファシリテーションを見る」ということに尽きるでしょうね。

 

中野:私も良いファシリテーションに参加して「あれは、ああいうところがよかったな」と、後から自分で編集し直していますね。

(対談了)

 

「まず”目的”が重要」「スキルのないファシリテーションは役に立たない」「マインドのないファシリテーションでは人は動かせない」 印象に残る言葉ですね。

次回は、、、
第1回
対談で紹介された書籍

『ザ・ファシリテーター』

森 時彦 著(ダイアモンド社)

マーケティング部門のリーダーだった黒沢涼子が、畑違いの製品開発センター長に抜擢される。はたして、専門知識面でも年齢でも自分を上回る男性の部下を率い、組織を変えることができるのか…。ビジネススキルUPストーリー。

 

『ワークショップー新しい学びと想像の場』

中野 民夫 著(岩波新書)

学校教育、企業研修、環境教育、芸術活動、まちづくりなどさまざまな現場で、ワークショップという手法が注目を集めている。参加体験型、双方向性を特徴とするこの新しい学びと創造のスタイルにどのような可能性があるのか?多くのワークショップの企画・運営に携わってきた著者が豊富な事例をもとにその意義を語る。

『問題解決ファシリテーター』

堀 公俊 著(東洋経済新報社)

戦略型リーダーに必要とされる組織(チーム)の力を発揮させ、問題解決を実現させる技術を事例をもとに指南。「ファシリテーション」という新しい概念の本格的解説書。

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森 時彦

㈱ワイ・インターナショナル、代表取締役社長

㈱リバーサイド・パートナーズ、シニア・アドバイザー

チェンジ・マネジメント・コンサルティング代表取締役
BBT大学客員教授/日本工業大学大学院客員教授
/NPO法人日本ファシリテーション協会フェロー

大阪大学卒業後、マサチューセッツ工科大学(MIT)へ留学。
神戸製鋼所を経て入社したGE (ゼネラル・エレクトリック)では製品開発から事業企画・営業まで、様々な組織のリーダー、日本GE役員などの要職を歴任。
その後、テラダイン(日本法人)代表取締役を経て、株式会社チェンジ・マネジメント・コンサルティングの代表取締役として組織活性化に携わるかたわら、2007年からは中堅企業の成長促進による価値創造をビジネスモデルとする投資アドバイザー会社・株式会社リバーサイド・パートナーズの代表パートナーに就任。
著書に『ザ・ファシリテーター』『ザ・ファシリテーター2』『ファシリテーターの道具箱』『セルフ・ファシリテーション』『プロフェッショナルファシリテーター』 他

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中野 民夫

ワークショップ企画プロデューサー。東京工業大学教授(来春発足するリベラルアーツ研究教育院)1957年東京生まれ。東京大学文学部卒。株式会社博報堂に30年間勤務。大阪の営業から始め、1990年前後に休職・留学したカリフォルニアで、組織変革や環境や平和の分野で様々なワークショップに出会い、研究を始めた。復職後は、企業の社会貢献活動や愛知万博の地球市民村(NGO Global Village)など社会テーマ系の仕事に従事。一方個人で、人と人・自然・自分自身をつなぎ直すワークショップや、分野を超えて参加型の場づくりを学ぶファシリテーション講座を、Be-Nature Schoolなどで実践。2012年に早期退職して京都の同志社大学の教授に転身、大教室での参加型授業を展開。15年秋から教養教育による東工大の改革をめざすリベラルアーツの動きに参画。主著に、『ワークショップ』『ファシリテーション革命』『みんなの楽しい修行』など。公益社団法人日本環境教育フォーラム理事、FAJフェロー

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